大判例

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東京高等裁判所 昭和44年(う)1136号 判決

被告人 宮内勝也

〔抄 録〕

論旨は要するに、原判決は、『被告人は昭和四三年六月二五日午後八時ころから翌二六日午前零時ころまでの間、東京都目黒区原町一丁目一五番二号麻雀遊技場「西小山クラブ」(営業名義人石井正)において、賭場を開設し、賭客原田誠司らをして、麻雀牌を使用し、金銭を賭して俗に「半荘麻雀」という麻雀遊技をさせ、その際いわゆる寺銭として金銭を徴し、もつて賭博場を開帳して利を図つた』との事実を判示して被告人を有罪としている。しかし、(一)右原判示事実は、賭博開帳図利の罪となるべき事実の摘示としては余りにも抽象的であつて、被告人のどのような具体的行為が同罪の構成要件に該当するかを明白にしていないから、原判決には理由不備の違法があるのみならず(二)被告人は原田らが右賭博をなすに際し、被告人と石井正外一名との共同経営にかかる右西小山クラブの施設を提供したことは事実であるが、麻雀遊技場において賭麻雀が行われていることは公知の事実であつて、被告人自身は、右賭博に関与し、これを支配管理したことはなく、原田らの右賭博の勝敗とは無関係に、ゲーム代として同人らから一回のゲームにつき飲食費サービス料込みで五千円の定額を徴収したにすぎないから、被告人の本件所為は賭博幇助罪を構成するに止まるのに、原判決がこれを賭博開帳図利罪をもつて処断したのは、理由そごの違法ないし判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認又は法令の解釈適用を誤つた違法を犯したものであるというのである。よつて考察するに、

(一) 刑事訴訟法第三三五条により、有罪判決に罪となるべき事実を判示するには、当該犯罪の構成要件に該当する具体的事実を、事件の同一性ならびに法令適用の事実上の根拠を確認することのできる程度に表示するを要しまたそれをもつて足りるところ、前記原判示事実は、賭博開帳図利の犯罪事実の記載として、右要件を具備するものであり、所論のように、具体性を欠くものとは認められないから原判決には所論の如き理由不備の違法は存しない。

(二) しかして、賭博開帳図利罪は、犯人が利益をえる目的で、自ら主宰者となり、賭博をさせる場所を開設することにより成立し、その場所はとくに賭博をさせる目的で設けられたものであることを必要とせず、その目的とする利益は賭博場開設の対価としての性格を有する限り、寺銭、入場料などその名義のいかんを問わないものであり、また、開帳者自身が賭博行為に加わることも必要ではないと解すべきであるところ原判決挙示の証拠(被告人の捜査官に対する供述も、他の関係証拠と対比してその信用性を肯定することができる。)を綜合すれば、(1)被告人は、東京都目黒区原町一丁目一五番二号において、昭和四三年二月ころから石井正外一名と共同で麻雀遊技場「西小山クラブ」(営業名義人石井正)を開設したが、実際の経営はほとんど被告人がこれを行つていたこと、(2)被告人は同年六月始ころから、毎週火曜日には店の一卓を被告人の専用として自ら客を集めて麻雀賭博をさせていたが、同月二五日(火曜日)にも右クラブに原判示原田誠司のほか村田進、箭竹栄、島崎竜五郎を誘致した上、同人らをして同日午後八時ころから翌二六日午前零時ころまでの間、右クラブの遊技施設を使用し、賭金を千点につき千円として俗に半荘麻雀と称する賭銭博奕を行わせたこと、(3)その間被告人、石井正らにおいて、一回の賭博(所要時間約一時間)毎に勝負による右賭客の得点数の計算をなし、最高得点者から被告人が予め定めていた五千円(飲食代を含む。)を寺銭、場所代、ゲーム代などの名義で徴集利得したこと、(4)右金額は、同クラブの正規の遊技料(一時間一卓につき二〇〇円)と比較し著しく高額であること、などの事実が認められ、これによつて見れば、被告人は所論のように、同クラブの営業の一環として麻雀遊技施設を客に提供し正規の使用料金を徴したものとは到底解し難く、かえつて、賭博場を開設しその対価として金銭を徴し利益をえる目的のもとに自ら主宰者となり、原田らに対し同クラブにおいて被告人専用の一卓と麻雀用具とを提供使用せしめて被告人の支配下に麻雀遊技による賭銭博奕を行わせたものであることが認められるから、その所為は前段説示に照らし賭博を開帳して利を図つたものというべく、前記犯罪事実を認定した上刑法第一八六条第二項を適用処断した原審の判断は正当であり、これに反する所論は採用できない。されば原判決には所論の理由そご、事実誤認ないし法令適用の誤りなどの違法は存しない。

(遠藤 青柳 菅間)

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